表層崩壊地における「表土層」の現地調査および樹脂固定標本による地質記載と解析
-兵庫県・洲本花崗閃緑岩分布域の例-

井上 善夫・藤原 誠・香本 佳彦


集中豪雨等により多発する表層崩壊とは,文字通り表土層(厚さ0.5 ~ 2m 程度)が崩壊する現象です.その崩壊メカニズムの理解や発生予測をするには,崩壊予備物質である表土層の地質(土壌)構成や組織を詳細に観察することが重要なステップとなります.しかしながら,ネジリ鎌等で整形した露頭表面は変形しており,現地において微細組織を観察することは容易ではありません.そこで著者らは,花崗岩分布地域の表層崩壊を対象とし,表土層の樹脂固定標本を作成して詳細に観察するという手法を試みました.また,各種原位置試験結果(地盤の硬軟や締まり具合,及びそれから推定される力学特性)も併せて検討し,対象地における崩壊面は,土壌学的区分によるB 層(上位層からの溶脱物質の集積層)とその下位のC 層(強風化した基盤岩:マサ)との境界付近に相当することを明らかにしました.加えて,樹脂固定標本で認められる微小割れ目が,水みち及び潜在的な崩壊面として機能していた可能性を指摘しました.本論は,樹脂固定標本を用いた表土層観察の有効性を示した研究事例であると言えます.

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