地震による道路災害での地質調査の計画立案と実施

草野 高志・本郷 美佐緒

 自然災害は人命に大きな被害を与えるだけでなく,公共的施設(道路など)にも多大な損害を生じさせ,被災後は如何に早期復旧できるのかが重要な課題となります.大規模な災害では復旧に係る費用も莫大になるため,国の災害復旧事業制度を活用することになります.それには迅速かつ適確な調査に基づく復旧事業計画が必要であり,その調査を担うのが地質技術者であります.切迫した状況下で,彼らは大いに頭を悩ますわけですが,その際に過去の災害調査事例は参考になりえます.この技術報告では,2014 年11 月の長野県神城断層地震で被災した道路(基盤地質は新第三紀の凝灰岩等)の災害査定に向けた調査について,著者らが経験した一連の問題解決のための取り組み,すなわち緊急調査,調査計画の立案,調査の実施,今後想定される事象(崩壊規模)の推定,そして対策工法の提案が時系列に沿って記述されており,読者も現場を疑似体験することができるような内容となっております.本報告は岩盤の不安定領域を推定する際のボアホールカメラの活用事例でもあります.また,開口亀裂の定点観測における簡易で精度の良い手法も紹介されております.多くの地質技術者の方にとって,この報告が参考になるのではないかと思われます.

△クリックするとPDFファイルを表示できます