ルミネッセンス法による斜面崩壊の年代推定

小畑 直也

 崩壊履歴を有する地域において,その発生頻度と気候変動等との相関を調べることにより,中・長期的な斜面崩壊の発生予測が可能となることが期待されます.それには斜面崩壊の発生年代を精確に推定する年代測定手法が鍵となります.これまで,火山灰編年,放射性炭素年代,年輪年代といった測定手法が崩壊発生年代の推定に用いられてきましたが,これらの手法を適応するには,地層中に火山灰層や樹木・炭化物が含まれている必要があり,対象地において必ずしもその条件がそろうとは限りません.そこで著者は,地層中により普遍的に存在する石英や長石を対象とし,ルミネッセンス年代測定法を用いて斜面崩壊発生年代(数千年~数十万年前)を推定することを,これまでの研究事例に基づき検討しました.その中で,光ルミネッセンス(OSL)年代測定におけるSAR 法(少量試料での測定が可能)により蓄積線量値の頻度分布を検討することで,崩壊年代の推定が可能となることを指摘しました.併せて,本手法を利用しようと考えている専門外の研究者・技術者に向けて,ルミネッセンス年代測定法を適用する際の注意点についても解説しています.

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