EPMA(電子プローブ・マイクロアナライザー)

EPMA分析は,微細な部分に記録された化学的特徴を明らかにすることができるため,岩石,火山灰,堆積物,土器などの対比などに有効です.また鏡下観察で不明な鉱物の種類の決定にも威力を発揮します.

EPMA分析では,電子顕微鏡に取り付けられた分析装置を用いて「微小領域の化学組成」を明らかにします.直径5ミクロンほどの領域の点分析が可能です.

同じ装置をもちいて,面の分析を行うことも可能です.通常の面分析では,結果として得られる画像の各画素に,元素の濃度を反映した色を付しています(図1).つまり通常の面分析では,「元素の濃度分布」が得られます.測定範囲は通常50ミクロン×50ミクロン~1cm×1cmです.

また面の分析結果をクラスター分析(*1)することで「鉱物の分布」をカラーで表現することや(図2),モード組成を算出することも可能です.さらに点分析と面分析を組み合わせることで面分析結果を重量パーセントの分布図に換算することも可能です.これにより,任意の点や領域の化学組成(領域の化学組成は,局所的な全岩化学組成とみなすことができます)を数値として得ることができます (Yasumoto et al., 2018).


EPMA_Ca EPMA_Mn

図1 ザクロ石の面分析の例.左:カルシウムの濃度分布.右:マンガンの濃度分布.いずれも黒→青→緑→黄→赤→白の順に元素の濃度が高いことを示しています.

EPMAを用いた面分析による鉱物分布の描画の例

図2 面分析による鉱物分布の例(*2).上:岩石薄片のスキャン写真.下:EPMAを用いて鉱物の分布を描画した例.EPMAによる面分析で得られたデータにクラスター分析を適用し,化学組成の似た画素同士を同じ色に塗り分けることで鉱物の分布状況を画像化できます.細粒の鉱物の分布状況は,岩石薄片のスキャン写真(写真上)では視認しにくいですが,EPMAによる鉱物分布で(写真下)は詳細に表現されています.


*1 クラスター分析とは統計解析の手法の一つで,データ群を類似度に応じた複数のグループに分ける手法です.
*2 図はCC BY 3.0ライセンス(クリエイティブ・コモンズ表示 3.0 非移植)に基づきYasumoto et al. (2018) の図3を改変しました.
Yasumoto, A., Yoshida, K., Kuwatani, T., Nakamura, D., Svojtka, M., & Hirajima, T. (2018). A rapid and precise quantitative electron probe chemical mapping technique and its application to an ultrahigh-pressure eclogite from the Moldanubian Zone of the Bohemian Massif (Nove Dvory, Czech Republic). American Mineralogist, 103(10), 1690-1698. https://doi.org/10.2138/am-2018-6323CCBY