山口県蓋井島花崗岩に記録されたマグマ混交・混合現象

今岡 照喜・小林 実和・曽根原 崇文

 
 山口県下関市蓋井島(ふたおいじま)における白亜紀火成活動史とマグマ混交・混合現象について検討した.本島に分布する花崗岩(蓋井島花崗岩と呼ぶ)は島の中央部から東部にかけて分布し,関門層群下関亜層群,古期岩脈類を貫き,新期岩脈類に貫かれる.蓋井島花崗岩はおもに細粒な黒雲母花崗岩から構成されるが,一部に小規模な石英閃緑岩(一部,斑れい岩を含む)を伴う.黒雲母花崗岩には苦鉄質火成包有岩(MME:トーナル岩〜石英閃緑岩質)が含まれる.MME の中にさらにMME を含む二重包有岩もみられ,複数回のマグマ混合が示唆される.石英閃緑岩(〜斑れい岩)中には垂直にのびた径数cm の花崗岩質パイプがみられる.このパイプはより苦鉄質なマグマにトラップされた低密度・低粘性の花崗岩マグマの小球状体が重力的に不安定のためにダイアピル状に上昇してきたもので,まだ十分流動的であった苦鉄質マグマと花崗岩質マグマが同時共存し,両マグマの混合が進行したことを示す重要な証拠と考えられる.

△クリックするとPDFファイルを表示できます