これからの防災教育に果たす大学の役割

此松 昌彦

 
1.和歌山県で発生するであろう災害
 筆者が勤務する和歌山県では来る南海トラフの地震を見据えて,県民は地震についてとっても関心を持っている.それは県が実施した地震・津波等の県民意識調査によって,南海トラフの地震に関しては和歌山県民の83.4%の方が「非常に関心」「関心を持っている」(和歌山県,2014)ことからも理解される.ただ2011 年の東日本大震災直後のアンケートより「非常に関心」は低下したという.それは少しずつの災害の意識の風化ともいえるだろう.人間は悲しいことなど,忘れたくなる動物である.しかし悲しい気持ちは忘れても,これからの災害に対しては前向きに備えて,災害を最小限度にしていかなければならない.その意味においては過去の災害を伝えることは重要であり,二度と同じことにならないようにしていかなければいけない.
 また和歌山県においては,東日本大震災と同じ年の9 月4 日に紀伊半島大水害が発生して,和歌山県をはじめ三重県,奈良県を含めた紀伊半島南部において洪水,土砂災害などの発生で,多大な被害を受けている.和歌山県は山間地が主体の県であり,紀の川河口に広大な和歌山平野と沿岸部に小さな沖積平野を伴う.実は和歌山県南部では地震より風水害による心配の方が強く感じられる.土砂災害についての問い合わせについて,私がセンター長として所属する和歌山大学防災研究教育センターにも講演などの依頼が多くなっている.

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