北海道最長洞窟「北海洞」発見記

長谷川 航

 
 少し空気の綺麗な所へ行って,夜空を見上げてみる.瞬く星の合間に人工衛星の光が見えることだろう.しかし,我々が人工衛星を見ているのと同じように,人工衛星もまた我々を視ている.地球を回る人工衛星が正確に何個あるのかはわからないが,数多くの衛星が地球を回り,地球上の隅々までカメラを向けている.さらにその衛星写真は,航空写真とも組み合わされて,Google Maps に代表されるようなWeb サービスによって公開されていて,自宅にいながら,世界中の隅々まで見られるようになっている.さて,その様な状況にある現代社会において,探検という言葉を古典的な地理的フロンティアの追求と定義したとき,既に地球上には探検すべきフィールドは残されていないのではないかという考えが生じるのは当然のことである.しかし,衛星から視ることができるのは地表面だけであって,地球の内部までは覗くことはできない.地球の内部には通常入ることなどできないが,一つだけ例外がある,それが「洞窟」である.「洞窟」は,地上に残された唯一の地理的フロンティアなのである.
 2006 年9 月23 日,この日はどうやら平和な一日だったようだ.この日の北海道新聞一面トップには,次のような文字が踊った.「北斗に270 メートル鍾乳洞.北大探検部が発見.」
 洞窟探検というものは,興味を持っている人はたくさんいながら,実際にやっている人は少ないという不思議な分野である.その中には新洞探査と呼ばれる「新しい洞窟探し」を行っている人達がいるが,具体的な活動内容は全く知られていない.そこで本記事では,当時北大探検部に所属していた私が,北海道最長の洞窟を発見するに至るまでの体験談を記し,知られざる新洞探査の実際を紹介したいと思う.

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