エチオピア,Awash 川下りの旅

香本 佳彦

 
 2005 年,私は北海道大学理学部地球科学科の三回生であった.当時,学業に対する目的意識を持てずにいた私は,進学して卒業研究に取り組もうという前向きな気持ちを全く失っていた.その年,日々刻々と過ぎてゆく現実から逃れるように,私は休学することを決めた.
 どこか遠くへ行ってみようか…. どこかと言ったらアフリカしかない.なぜかそう思った.そして,アフリカのどこかで川下りをしよう.気に入ったところで,ボートを膨らませ,好きなところまで川を下る.そんな自由な旅ができたら,それがアフリカなら,最高の旅になるに違いない.ただ,一口にアフリカと言っても,あまりに広大である.さて,どのあたりを目指
せばよいだろうか.
 探検スタイルのボートは急流向き,つまり安定性は高い反面,推進力は弱く川の流れを利用することが前提の舟である.それを考慮すれば,行き先は大河ではなく,まず地形の起伏のある場所を探すべきだろう.
 そこで,改めて部室(探検部)にあった世界地図でアフリカ大陸の地形を見みてみると,標高の高いエリアは概ね東海岸に沿って南北に,すなわちアフリカ大地溝帯に沿って分布している(図1).中でも大地溝帯北部に,明らかに起伏の卓越した地域がある.それはエチオピアである.こうして大体の行先が決まった.あとは,風の吹くまま,気の向くままでいいだろう.
 結局,実際には,エジプトからアフリカ大陸に上陸し,スーダン,エチオピア,飛んでカメルーンという国々を旅行した.本稿ではその中から,エチオピアでの川下りと,その前後のエピソードを紹介する.

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