小型無人航空機(UAV)の利用方法と地質調査業務への展開

宿輪 隆太

 
 一般的にドローンと呼ばれる小型無人航空機(小型UAV)の中でも電動マルチローターヘリリコプター(マルチコプター)の性能は目覚ましく向上した.これにより特段の操縦技術がなくとも高画質でブレの少ない,空中における静止画や動画が撮影できるようになった.
 ドローンで撮影した高画質な画像は,Structure from Motion(SfM)と呼ばれる三次元プリンターの出力データや3 次元CG の作成に用いる技術と組み合わせることが可能である.この技術を組合せれば,空中静止画から高精細のオルソ画像,高分解能(数10cm ~ 1m のコンター間隔)の地形図を作成することができる.これら技術は、地すべり調査や豪雨災害調査など自然災害対策だけでなく,メガソーラーや風力発電施設といった大規模な施設点検の分野で注目されている.特に災害発生時における迅速運用に向けては試験的な研究や調査が進められている(例えば,井上ほか,2014;内山ほか,2014a;内山ほか,2014b).
 筆者は2014 年4 月にドローンを導入した新規のサービスを提供すべく検討をはじめた.その後,機体の選定から操縦のトレーニングを経て同年9 月から試験運用をはじめ,2014 年12 月より地すべり地形調査,斜面対策施設の点検業務などの現地業務へ順次導入を開始した.
 検討当初,筆者はドローンについて知識・経験はまったくない状態だった.しかしながら現場業務に対する有用性や顧客へのアピールになることが強く期待できたため導入に踏み切った.
 現在,多くの事業者ではドローンの有用性を認めつつも,導入に向けたアクションを実際には起こしづらい状況ではないだろうか.本稿では導入の背景,機体の選定方法,操縦技術の習得方法,フライトの安全運用,今後の業務への展開といった点について筆者の経験をもとに順を追って報告する.本稿がドローン導入を検討している事業者の一助となれば幸いである.

△クリックするとPDFファイルを表示できます